「タヌキのかげを見た…?」



  「タヌキの生活の跡ではないか…」そんな情報も時々あります。

 1mほどの台の上に置いていたミカンが食べられていた。近くに糞が落ちていたが、その中に種が混じっていた。

 タヌキは、雑食性です。ミカンも食べますし、糞の中にはいろいろな種が混じっています。台の上に上ったのもタヌキにとってはさほど不思議なことではありません。タヌキが木に登ることはよく知られています。しかし、『近くに糞が落ちていた』でタヌキではないことが分かります。タヌキは『ため糞』をするからです。

 1998年11月27日と28日に大阪教育大学附属池田小学校の研究発表会がありました。

 2002年に戦後最大の教育課程の再編成があります。学校の完全五日制が始まります。小学校では、これまでになかった「総合的な学習の時間」ができます。週に3時間、「国際理解、環境、福祉・健康、情報」などをテーマに体験や活動を生かした学習が学級や学年、学校の裁量で行われます。小学校で英語に接する時間もこのような機会に行われることが多くなります。

 ところで、教育課程の再編成は「総合的な学習」の時間だけではありません。これまでの国語・算数・社会・理科などの時間数や内容も変わります。現行の内容を精選して削減し、小学生にとって理解しにくかった内容は上の学年や中学校に移行します。「総合的な学習」の時間ができるだけではないのです。

 たとえば、私は「理科の先生」とよく呼ばれます。もちろんふだんは学級担任で昨年度は算数のT.T.をしていますので理科の専科をしているわけではありません。しかし、これまで池田市内の理科の教育とはずっと関わり続けてきました。2002年には、理科の時間が3年生70時間・4年生90時間・5年生95時間・6年95時間となります。年間35時間が週1時間ですから1年を通して、週3時間というようなこれまでの時間割がなりたたなくなります。しかも、大幅な削除が行われます。「理科」の学習と「総合的な学習の時間」の関連と、きちんとした教育課程を今から考えておかなくてはなりません。もっとさしせまった課題に池田市の理科の先生達で作成している「ジュニアサイエンス池田」も根本的な改訂を2001年から2002年にかけて行わなくてはなりません。今から検討しておかないと、間に合うはずがありません。

 附属池田小学校での発表会は1日目は各教科からの総合化で、2日目は総合的学習でした。

 迷わず菅井先生の授業を見に行きました。菅井先生とは同じ大学の生物学研究会に入っていましたので、そのころからずっと日本の『森』について調べておられたことを知っています。『森』は菅井先生にとってライフワークのようなものです。それを授業であつかうのですから見に行かない訳にはいきません。

 授業は、『社寺林は何を語るか』です。附属池田小学校には、校舎や運動場以外の場所がいくつかあります。『自然観察園』もその一つです。授業はこの中の「学習の森」で行われました。

 森の観察を始めてすぐタヌキのため糞が見つかりました。もちろん、「やらせ」ではありません。菅井先生は、これまで子ども達に森を見る目を育ててこられていましたので、子ども達はタヌキのため糞があってもなくても様々な物を見つけてきます。ため糞を調べている子どもの中から、

「タヌキの影を見たことがある。」

そんな声も聞かれました。

 



(カキの木についたつめの跡)

 ため糞にあった新しい糞の形はくずれていませんでした。カキの種の割れた物も含まれていました。授業のじゃまをしてはいけないので、触りに行くのはやめました。子ども達といっしょに森の観察をしていると、

「近くにカキの木がある。」

と、教えてくれました。ほんの10mほど離れた所でした。あまり葉が残っていませんでした。もちろん、カキの実は残っていません。

 カキの幹、特に地面に近い部分や太い枝の上の面などをよく見るとつめの跡のような線が見られます。最近ついたものではなく、日数が少したっているようです。タヌキがこの木に登ってカキの実を食べていたのではないかと思われます。ちょうど近くにタヌキについて詳しい人がいましたので話を聞くと、

「タヌキの移動範囲は約800m程で、木登りが得意です。」

と、話しておられました。しかも、上手なだけでなく、先の方の危険な部分には乗ろうとしないそうです。この点では、人間よりもかしこいようです。



(中央から少し右下の黒いものの集まりが糞です)

 

 この時は授業中でしたので、次の28日は朝、授業が始まる前に昨日のため糞の場所を見に行きました。みんながいじくったためか50cm程離れた場所に新しい糞がありました。昨夜の雨で全体に柔らかくなっていました。夕食のメインメニューにはあまり自然の物は見あたりませんでした。パンやドッグフードが中心だったのかも知れません。他に参加していた先生の話では、

「運動場にタヌキの足跡がいっぱいついていた。」

とのことでした。

 附属池田小学校と大阪工業試験所は隣り合っています。タヌキはそれぞれの場所を行き来しているようです。


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