温暖化と生き物たち…2

暖冬と池田の蝶…イシガケチョウ

イシガケチョウ Cyrestis thyodamas(タテハチョウ科)
大阪府北部や周辺の地域でも採集されることが多くなったという話題は聞いていたが、1994年6月3日に、sim.氏が採集されたという話を聞くまでは、池田市ではまだ見られない蝶だと思っていました。ところが11日にも2匹目を採集されたという話を聞いたときには、偶産(ぐうさん…その地域にすんでいないものが偶然採集されたもの)というより、すでに土着(どちゃく…ずっとそこにすんでいる)しているのではという感じすらしました。いろいろ本を調べてみると、同じ6月に東山で2匹目撃された人もいるそうです。
1995年になっても、6月から7月にかけて文献(ぶんけん…ほんにのっていること)や伝聞(でんぶん…人に聞くこと)により2匹の目撃の記録がありました。
7月14日に話をうかがったoob.氏(緑のセンター職員)によると、2、3日前にボロのイシガケチョウを目撃されたということです。この時期には少なくなるということなので、1回目の発生がこのあたりでは6月ころのようです。
五月山の谷筋には、イヌビワが多くあります。葉にはいたるところにイシガケチョウのものではないかと思われる食べたあとがあるのですが、幼虫を見つけることはできませんでした。ただし、幼虫をさがし始めてから、イヌビワの新しい葉が出ることはありませんでした。
五月山でのイシガケチョウのようすをきちんと残しておこうと考えてしばらくたった8月27日、すぐ近くをイシガケチョウと思われるものが飛んでいましたが、これまでイシガケチョウを見る機会が少なく、葉の下にへばりつくようにとまり、はねを2、3度パタパタと動かしてから開いてじっとしたため、ガだろうと思い、葉の上からあみでたたいて飛びさる姿を見て、やっとイシガケチョウだと気づきました。たしかに図鑑にそのようなことがのっていた。あわてて反対の斜面にとまったものを追いかけましたが、手前にテングチョウがとまったのでそちらを採集している間に飛び去ってしまった。8月のテングチョウと、初めてのイシガケチョウ。選び方をまちがえたかなと思いましたが後のまつりでした。
9月に入って9日に二度目撃することができましたが、あみのとどかない斜面にそって飛んでおり、採集することはできませんでした。
翌10日、台風のために風が強く、時おり小雨の降る日に、おすを1匹めすを1匹採集することができました。このような天候のため、低いところを飛んでいたので採集できたのでしょう。両方とも、はねがほとんどきずついていませんでした。また、この月の29日には五月山を離れた五月丘4丁目でもnab.氏によって1匹が目撃されています。
10月に入っても、五月山(五月丘5丁目)でnab.氏によって目撃の記録があり、14日、21日とブッドレアで吸蜜中のおすが2匹、hir.氏と私によって採集されました。14日に採集したものははねがいたんでおり、21日のものは新鮮でした。
これらのことから1993年から1994年、1994年から1995年の二度の冬はめすが成虫で冬をこし、初夏に比較的多くのイシガケチョウが見られたものと考えられます。一時的にもイシガケチョウは五月山で土着していたようです。しかし、1995年の冬は、10年ぶりの寒さがくるとのことで一度土着したものが見られなくなることも考えられます。もう1年暖冬が続けば、1996年5月に幼虫が見られるかもしれない考えていたのですが、寒さのために土着がとぎれることも考えられます。
五月丘5丁目  1994.6.3     1匹採集(sim.氏)
        1994.6.11 1匹採集(sim.氏)
        1995.8.27 1匹目撃
        1995.9.9     2匹目撃
        1995.9.10 1♂1♀採集
五月丘4丁目  1995.9.29 1匹目撃(nab.氏)
五月丘5丁目  1995.10.2   1匹目撃(nab.氏)
        1995.10.14 1♂採集(hir.氏)
        1995.10.21 1♂採集


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