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ヒドリガモ・ドリちゃんの恋

 

2013年4月9日…大阪府池田市猪名川

 ヒドリガモのページで紹介している飛べないヒドリガモが猪名川にいます。4月に入って見られるヒドリガモの数がめっきりと減ってきました。

 傷ついたオスのヒドリガモはどうしているだろう、と思って猪名川を見ました。すると白い羽の目立つヒドリガモが見えました。きっとあのヒドリガモに違いない。川に近づくといつもこの鳥のようすも観察しておられるSak.さんの姿も見えました。Sak.さんと、「あのヒドリガモかな。」とか話しながら確認しました。Sak.さんはこのヒドリガモをドリちゃんと呼んでおられました。わたしもドリちゃんと呼ぶことにしました。近づいてきました。間違いなくドリちゃんです。と思っていると。その後ろからメスのヒドリガモがついてきていました。ドリちゃんが2羽でいるのを初めて見ました。「ドリちゃんに恋人がいるんだ。」

 でも、すぐにいくつかの心配がよぎりました。ドリちゃんは飛べないので北の国に帰れません。この時期です。ドリちゃんの恋人は北の国に帰るかどうか迷っているに違いありません。鳥としての本能が勝てばもうすぐ帰ってしまうでしょう。ドリちゃんのために猪名川に残るなんてありえない。わたしとしてはいっしょに残ってあげてと伝えたいところですがわたしはヒドリガモ語を知りません。

 もし残ってくれても繁殖場所が困ります。ドリちゃんが寝床にしていた場所の茂った草木は兵庫県川西市の人に全部かられてしまっています。S.河川事務所出張所の人に連絡して勝手に草刈りをしないように申し入れてもらっているはずでした。ここはゴイサギの冬の塒(ねぐら)にもなっていました。カワセミがよく飛んできたり、クイナやヒクイナがやってくる場所でもありました。今では、草や木がなくなったので犬を連れた人や子ども達も遊びに入ってきます。鳥が子育てをしにくい場所になっています。川辺の木は残してどうしてここだけ全部かってしまうのだろう。どうして国の持ち物なのに勝手に切っていいのだろう。不思議でした。また、I.河川事務所の人が、「政権が代わったので予算がつきこの辺りの工事をします。」と言っていたという話しも聞きました。話しをしてくださった方に、この場所だけを考えるのではなく、基本は防災だが子どもにとっても原体験のできる数少ない場所にもなってきているので、人や自然を総合的に理解しながら河川の愛護も含めて計画をしていく必要があるのではと話しをしました。そんな場当たり的な税金の使い方はやめてください。ドリちゃんではなく、わたしが思いました。

 2羽の別れは明日にでも近づいているような気がします。ドリちゃんはまた1羽だけで次の冬が来るのを待つのでしょうか。

泳ぎだしたドリちゃん
2013年4月18日…大阪府池田市猪名川

 ずっとヒドリガモのドリちゃんが気にかかっていました。この日、太陽が傾きかけた時刻に探しに行きました。ドリちゃんは1羽のカルガモといっしょにいました。近づくとカルガモは飛びました。ドリちゃんは1羽になっていました。メスと別れたのは単なる性格の不一致?だったのでしょうか。それとも鳥の本能がさせたことなのでしょうか。ドリちゃんは上流にゆっくりと泳ぎ始めました。

羽ばたこうとするドリちゃん

 一度中州に上がって少しだけの葉を食べました。そして羽ばたこうとしました。右の翼は羽らしさをとどめていません。また泳ぎだしました。

すれ違ったヒドリガモ
2013年4月18日…兵庫県川西市

 まだ北帰行をしていないヒドリガモのペアがいました。少し近づいたかと思うとそのまますれ違っていきました。

河川敷のアベック

 春は出会いと別れの季節です。河川敷にも何組かのアベックが見られました。恋がお似合いの季節です。ドリちゃんにもこんな時間を過ごさせてあげたかった。

 Sak.さんが初夏にドリちゃんを見られたのは2009年のことでした。5回目の夏を日本で向かえます。

満開のセイヨウカラシナの花

 河川敷のセイヨウカラシナも満開になりました。春です。

タチヤナギの綿毛

 タチヤナギには綿毛がたくさんついていました。もうすぐ柳絮(りゅうじょ)のころです。ヤナギも空を舞う季節なのに…。

カルガモといるヒドリガモのドリちゃん
2013年5月4日…兵庫県川西市猪名川

 2013年5月4日、猪名川河川敷からは冬鳥の姿がまったくなくなりました。ヒドリガモのドリちゃんが気になったのでほかの方に聞きました。「対岸のあの鳥がドリちゃんです。」とのこと。2羽のカルガモといっしょにいました。ほかの人もドリちゃんがどうしているのか、いつも気にかけているようでした。

1羽だけのヒドリガモのドリちゃん
2013年5月5日…大阪府池田市猪名川

 岸に1羽だけでヒドリガモのドリちゃんがいました。しばらくすると近くに泳いできました。いつも観察しておられるSak.さんが「色が鮮やかになりましたね。」と言われました。そろそろ北の地域に帰ったヒドリガモ達は子育てを始めているのでしょうか。

中洲で休むヒドリガモのドリちゃん
2013年5月6日…大阪府池田市猪名川

 ヒドリガモのドリちゃんが呉服橋の下手にある中洲で休んでいました。ここが一番安全な場所なのでしょう。

中洲で休むヒドリガモのドリちゃん
2013年7月4日…大阪府池田市猪名川

 大阪府池田市と兵庫県川西市にかかる呉服橋の上から見ると、下流側の中洲にドリちゃんが休んでいました。草木が伸びてきたので最近はここまで人間が入ってくることは減りました。

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