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モンシロチョウの幼虫と間違えられる、イラクサギンウワバ・タマナギンウワバ

 

イラクサギンウワバの幼虫の写真
2012年10月20日…兵庫県川西市

 

 以前職場がいっしょでお世話になった方からメールが届きました。幼虫の写真が添付されていました。

「我が家のベランダにいる、青虫が、なんの青虫さんか教えて頂きたく、メールしています。」幼虫がいたのは兵庫県川西市の町の中です。

 やや虫が苦手な娘さんが初めて「かわいい。飼いたい。」と言われたそうです。「モンシロチョウには、季節がずれているような気がしますし。ブロッコリーと葉牡丹の葉っぱにいました。」

とのことでした。以前から小学生がモンシロチョウの幼虫と間違えて捕まえてくるアオムシです。三年生の理科でモンシロチョウが出てくるのです。しかし、名前を知りたいとは思っていましたがそのままほっちらかしでした。野菜の葉を食べるアオムシなのでヨトウガの幼虫だろうと返事をしてしまいました。思い込みから出た大うそでした。もうすぐ蛹になるだろうから土を入れておくといいと伝えたのですが、「蛹になりました。」という返事が返ってきました。写真が添付されていました。土にもぐろうとしていた気配がありません。あれっ。

イラクサギンウワバの幼虫
2012年10月27日…兵庫県川西市

 繭の中に蛹がいます。何か間違ったような気がします。ヨトウガなら蛹で越冬するはずです。でも違うような気がします。タマナギンウワバのような気がしてきました。こちらだと羽化までに長い期間はかかりません。しばらく観察してもらいました。

2012年10月31日…兵庫県川西市

 やはり羽化をしました。上の写真は羽化に気づいて15分後に撮影されたそうです。よく羽化に気づかれたものです。しっかりと観察しておられたようです。

「さらに45分後です。娘の第一声は、「かわいい〜。」でした。止まり木がいるかと思って、おはしを入れてましたが、関係ないようで、プラスティックの水槽に、張り付いていました。やっぱり、タマナギンウワバでしょうか?」

 成虫の写真を見てタマナギンウワバに違いないと思いました。娘さんが少し虫を好きになってよかったと思いながら返事を送りました。

 これで大丈夫。タマナギンウワバだ。しかし、念のために似た種類がいないか確かめた方がいいのでは…。昆虫を調べていると必ずといっていいほど似た種類がいます。

 なんとガマキンウワバというよく似た種類が出てきました。こりゃだめだ。自分の力の限界を感じてきました。ガの得意な人に聞かなくては…。

 いつも生き物のことでお世話になっているK.先生にメールを送りました。お助けください。

 返事をいただきました。イラクサギンウワバです…!!!メールを送ってからも調べているとこのイラクサギンウワバはでてきました。ガンマキンウワバは少し色の違う部分があるようですが、このイラクサギンウワバはそっくりでした。写真で比較していただいたのでその写真を了解を得て使用させていただきました。

イラクサギンウワバの写真

 

タマナギンウワバの写真
イラクサギンウワバ

タマナギンウワバ
標本作成・保管、撮影 木下 修一氏

 翅の白い部分の違いが区別の決め手になるようです。よく見るとほかにも違いが見つかります。個体差もあるのでしょうが。

 説明をいただきました。「イラクサギンウワバは普通種で、私の住む地域でも数多く見ることができます。記録を見ると9−11月が多いですが、1月とか7月にも見たことあるようです。」とのことでした。

 大阪府池田市や周辺の北摂地域でも普通種のようですので、小学校三年生の理科の授業で子ども達がモンシロチョウの幼虫だと思ってとってくるアオムシはイラクサギンウワバやタマナギンウワバの場合が多いようです。幼虫での区別点はわかりませんでした。学習指導要領では、「身近な昆虫や植物を探したり育てたりして、成長の過程や体のつくりを調べ、それらの成長のきまりや体のつくりについての考えをもつことができるようにする。」とあります。モンシロチョウでないから教材として用いてはダメということはまったくありません。イラクサギンウワバやタマナギンウワバを教材として学習していいのです。どちらの種類なのか、成虫にまで育てて比べてみようと目標を持って飼育することは大切なことだと思います。ただし、モンシロチョウの成長についても触れておかないと学力テストなどではモンシロチョウが当然のように出てきますのでテストではとても不利になります。学力のない子ども、学力のおとっている子どもとテストでは判断されます。でも科学的なものの見方や技能が身についたほんとうの意味での学力が身についた子どもに育ってくれると思います。

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